普通旅客運賃

運賃の基礎となるのは、普通旅客運賃です。現在、日本の鉄道会社が採用している普通旅客運賃制度は、大きく次の4種類の運賃体系に区分されます。


1.対キロ制
対キロ制は、キロ当たりの賃率に乗車区間の営業キロを乗じて運賃額を計算する方法であり、運賃は、乗車距離に正比例して増加してゆきます。 JRの運賃は、この対キロ制を主体としています。
JR東日本の幹線の運賃を例にとると、10キロまでは、キロごとに表で額を決める表定制ですが、10キロを超え300キロまでを第1地帯、600キロまでを第2地帯、600キロを超えると第3地帯と区分しており、それぞれのキロ当り賃率を変えた対キロ制を採用しています。
第1地帯は16円20銭、第2地帯は12円85銭、第3地帯は7円5銭となっており、遠距離は、安く設定されています。(遠距離逓減制といいます)
なお、計算の煩雑さを解消し、運賃体系を単純化して利用者に分かりやすくするため、一定の営業キロごとにその区間の中央キロを代表キロとしてキロ当り賃率に乗じて算出することとしています。
例えば11キロから50キロまでは5キロごとに区分した区間の中央キロにより算出し、11キロから15キロまでの中央キロは、13キロとなります。
よって11キロから15キロまでの運賃額は、13キロの運賃額とすべて同額の230円となります。 具体的には、次のとおり算出されます

13キロ×16円20銭=210.6円→220円(は数整理)
220円×消費税分1.05=231円→230円(は数整理


2.対キロ区間制
対キロ区間制は、一定の距離を基準とした区間を定め、区間数に対応した加算額を累算してゆく制度で、乗車距離に応じて階段状に運賃が変化してゆくものです。
階段の高さ(加算額)、階段の奥行きの長さ(同一運賃で乗車できる区間長)を変化させることにより遠距離逓減の運賃体系がつくられている場合が多く、運賃が簡明で、券売機、精算機などの対応も行いやすいことから、大手民鉄をはじめ営団、公営地下鉄、中小民鉄の多くで採用されています。


3.区間制
区間制は、鉄道路線を概ね等距離に区分して、1区100円、2区200円というように乗車区数に応じた運賃を定める制度です。
叡山電鉄(京都府)や箱根登山鉄道鋼索線(神奈川県)、近畿日本鉄道生駒鋼索線(奈良県)等の鋼索鉄道で採用されています。


4.均一制
均一制は、乗車キロに関係なく運賃を均一とする制度です。
この制度は、利用者にとっては単純でわかりすく、鉄道側にとってみれば集改札での設備の簡素化、省力化が図れるメリットがあります。
ただし、短い距離を利用する者にとっては割高感が生じるため、鉄道全体の営業キロが短いか、旅客の乗車距離が平均して比較的短い路線で馴染む制度と考えられます。
山万(千葉県)や舞浜リゾートライン(千葉県)のような新交通システム、モノレールや東京急行電鉄世田谷線(東京都)、阪堺電気軌道(大阪府)、長崎電気軌道(長崎県)等の路面電車で採用されています。 それぞれの制度のイメージは、次図のとおりです。